[王弟との出会いは、もう16年も前になる。
母と引き離され、見知らぬ女性と対面したと思えば拒絶され、あれよという間に神殿へと引き渡されて。
そんな状況だ、厄介払いをされたのだろうなという自覚はすぐに出来た。
幸いというかあまり子供らしくなかった己は、現状を嘆いた所で意味は無いとも分かってしまって。
学べる事は全て学んでとっとと出ていくか、そんな思考で5年の月日を経たある日]
……くそ。
[その日は、あまり良い日ではなかった。
朝から年上の言いがかりを受けて、捨て子呼ばわりされて。
子供らしく泣くなんて可愛げは無かったけれど、誰かに泣きつきたい気持ちは確かにあって。
神殿の中幾つもある神の像、中でも母が信仰していた神の下、母に歌ってもらった子守歌の旋律を草笛で奏でることで気を落ち着かせようと]