─1日目・PM14:40・第三訓練場─
減点ないならセーフ、…か?
[教官の言葉に安堵したように息を吐くがどうしたものかと思案を巡らせる。…だが、汚れた衣類を纏ってるのは居心地が悪い。しかも身体に悪影響があると聞けば今すぐにでも着替えに行きたいところだがそういう訳にもいかないだろう。
とりあえず訓練場の端に寄って、上着にこびり付いた粘着液を拭き取る]
…あ゙〜、めんどくさいな…。もっと威力を抑えてやるべきか…?でもそれだと派手さがないからな…別に格好良さ求めてるわけじゃないけどさ〜…。
スライム相手にはそもそも体術って効きにくいわけだから魔法メインにするべきだろうしな…どうしたものかな。
[母親に持たされたレースのハンカチは見事に粘着液で汚れ見るも無惨な姿へと変貌していた。だが特に気にする事はない、だって使われるということはこういうことだからだ。
屋敷にいた頃は文句のひとつでも言われたが、ハイネ・A・ゲルトという男はそういう男なのだ。高いものだから丁寧に扱うべき、安いものだから雑に扱っていい、という概念などない。…もちろんそれは彼が“甘ちゃん”だからこその発想なのだろうが、その考えに彼が到ることはない。
──とりあえずは見られる形にはなった。匂いはやや残っている気もするがまだ実習は終わってはいない、改めて上着に袖を通し班員の元へと戻った。**]