[大人たちは連れ戻すべきだとか加勢するべきだとか喧々諤々だったが、ひとり青年の祖父だけは悠然としていた。] 「ええ。あれもあの二人の息子だて。無様なことはせんよ。 好きにさせてやりい」[老人の言葉と、声の底に潜む迫力に押されて村人たちは口をつぐみ、集会所を離れていく。よっこらしょ、なんて声を上げながら立ち上がる老人は、よく見れば皺の間に無数の傷跡が刻まれていた。]