[まるで癇癪を起こした子供に優しく言い聞かせられるような言葉。
酷く懐かしいその響きが、ゆっくりと身に染み渡っていく。
首を、頭を、そろそろと撫でられ>>53、気づけば黒い獣はぼろぼろと涙を流していた。束の間、静かで穏やかな時間が流れる]
(この馬鹿、馬鹿。馬鹿―――。)
[言いたいことは沢山あるような気がするのに、言葉が出ない。己の命が危ないことは頭の隅でぼんやりと分かっているのに、伝わる体温が優しすぎて、どうしても体が動かなかった。
嗚咽を漏らし、涙を流しながら伝えるシモンに、ようやっと一言告げる]
……お前が、泣いてんじゃねぇかよ。
[そういうこちらだって、似たようなものだったけれど]