負傷兵 シモン

― 1日目夜：�C号室 ―

［部屋に帰るなりペンを取り、今日の収穫を書き記す。］

『鳶色の瞳の君へ

　なんとか神父に話をする事が出来た。時々鋭い所もあるが、今の所信用されていると思う。
　先ずは第1目標達成、かな。

　次の目標は"狼の脅威に成る"こと。その為には先ず狼探しだ。
　祭の夜、船を沈めたのは誰か？嵐の晩に様子を見に行った連中が誰か、それより前に動いた奴は居なかったか？
　残っている人達に聞いてみる価値はあると思う。
　
　あとは、パン屋の反応がやはり気になる。
　比較対象にしたニコラスの反応は、100点満点の"何も考えてない"反応だった。何も思う所がなければあの様になるはずだ。
　パン屋は何を考えた？余所者の俺を警戒していた？あの処刑場に口外したくない秘密がある？
　いずれにせよ、何か隠している事は間違い無いだろう。
　だが、この事は神父には報告しない。
　狼が誰かは俺だけが把握していれば良い。
　誰よりも早く狼を見つけ出し、そして――』

［ここまで書いて、ペンを置いた。
　夢中でペンを走らせていたので、すっかり夜も更けてしまった。明日も忙しくなる。風呂にでも入っておけば良かった、なんて思いながら、冷たいベッドの中に潜った］*