……ッチ。
[勢い余って道路にめり込んだ手斧を引き抜きながら
無造作に横へ振れば、蟻の体液が周囲へと撒き散らされた。
その時、超高速で突入してくる機体を砂ジンのセンサーがオートフォーカスで捉える。
戦場で久方ぶりに聞いた人間らしい――非戦闘員らしい、もっともな感情のこもった悲痛な叫び声に、思わず声を返していた。]
人が居る――人が居るからだ。
後方に数万数十万数百万の人間が居る。
ここで食い止めなければいけない。
大を活かすために小を殺す――。
軍人は効率よく敵を殺し、効率よく使い潰されるのが役割だ。
そういうコマなんだよ、我々は。
呉本。私達は「ひと」である前に軍人だ。
[>>53 >>54奮闘する機体に返される抑揚のない声。
まるで合成音声のように聞こえたかもしれない。]