―野茨城―
[>>20やがて黒馬は静かに止まり、目的地に到着した事を知る。
訪問の前触れと荷物運びを済ませた御者に笑みを向ける親をよそに黒馬の毛並に触れていたが、漏れ聞いた言葉に思わず顔を顰め。]
はァ…?
[――おい、引き延ばすつもりか。
親戚の住む城とは言え、無作法を辛うじて許容されている彼女の住まいとは勝手が違う。
男はげんなりとして溜め息をついた。
きっと自分が何を言っても聞かないだろう。むしろ嬉々として引き延ばそうとするかもしれない。
彼女が城の方へ進むようであれば、遠目には護衛の如く少し後ろを歩むだろう。]