― ある暖かい春の日 ―
[母の膝の上で、幼子がうとうとと微睡んでいる。>>45
幼子は母に良く似た髪の色、瞳をあければいっそう母に似ると言われるだろう。
母子揃った微睡みに、幼い瞳が不意に開いた。未だ夢から醒めきらぬ様子で、小さな頭がぼんやりと辺りの様子を見回す。
そこに見えたのは、眠りにつく母の顔と傍らに眠る兄の顔。>>50
大好きな顔が二つ見えたのが嬉しくて、幼子はぽふりとその間に顔を再び埋めた。微笑み浮かべた顔で瞼閉ざせば、また穏やかな夢へと誘われる。
夢うつつに見たのは、母と兄、父も交えた幸せな夢。
暖かな日。遠い日の春の記憶だ。*]