—自室—
[東の窓から溢れる陽光。
煩わしい明るさに寝返りを打った拍子に、私はベッドの端から転がり落ちた。
目頭に掌を当て軽い頭痛を振り払う。
散策活動も長きに渡れば消耗したか、精神的な疲労も相俟って、
太陽に起こされるまでは身動ぎすらせず深い眠りに沈んでいた。]
——……島、だったか。
[窓を開けると海猫の鳴き声に重なって潮騒が渡ってくる。
あの1年、遠い縁戚に預けられたときの記憶は抜け落ちたまま。
心の底で埋まらない孔を空けている。
同じ時間を過ごしたはずの妹は、ついに口を開く事なく。
何年か前、軍を調べると残したきり消息を絶った。
手早く着替えを済ませると、ベッド窓際に胡座をかき。
ジッポの硬質な音を響かせて揺らぐ火を見つめる。
紫煙が一時的に肺を満たして、すぐに口から抜け出て行った。]