[人間の気配を辿り、一人廊下を歩く。
再び城の中心部を目指して。]
―……。
[――失踪する戦地に赴く前、男は幼馴染に見送られた。
走る痛みを、隠し事をしている事を悟られたくなくて、
いつも通りを装うべく、いつからか作った笑いを浮かべていたが、付き合いの長い幼馴染にはお見通しだったかもしれない。
気をつけろよという彼の言葉に男は、
「大丈夫だ。もうすぐ俺は伯父になるんだからな。
漸く妹に授かる子供だ。会えるまではそう簡単に死なねぇよ。
…今度の手紙が帰ってきたら、一度実家に帰れないか、教会に申請を出そうと思ってる。その時はお前も来てくれるだろう?」
――それじゃあ、いってくる、と。
また帰って来られると信じて疑わず、戦地へと赴いたのだった。]