[そういえば、と。
店主に持たされ今は服のポケットの中にある携帯端末の存在を思う。
こんな時間に戻ってこないとなると、
店主から連絡がどんどん寄越されていてもおかしくはないのだが、
こうしている今も着信音は鳴らない。おかしい。
――いや、結界が通信機能すら阻害すると考えれば何もおかしくはないのか。
今、己がこうして戦うことを――
“力”を振るうのをためらわないと決めたことを店主に気取られる心配はなさそうな点、
それから、只人たる店主を確実に巻き込まずに済む点。
それだけは“やつら”に感謝してやろう。だがそれだけだ]