― 集会当日・シュビト中央広場 ―
当代の姫巫女は、なかなかにお転婆だからな。
[姫巫女まで来るのか、というシメオンには>>52そんな風に冗談めかした言葉を返す。
伝統と千年の閉ざされた歴史の象徴たる姫巫女。だが、その彼女自身が、こうして民衆の間にその姿を見せ、また民衆を知ろうと腐心することそのものが、姫巫女を神聖なるものとして高きに置く伝統とは相反しているのだと、あの姫は気付いているのだろうか?]
おや、怖いのか?
[場所を変えた方が、という提案には、揶揄うような口調を返し。見つかるとまずいのではと言われたなら、くすりと笑う]
なあに、見つかったら逃げ出すまでだよ。それにそもそも、君の容姿を知っている者など限られている。
私が変わった若者を連れ歩く事など珍しくもないからな、それこそ姫巫女本人でもなければ、気付きはしないだろう。
[もう一人、彼を見れば確実に気付く人間...カナンがこの街にはいるのだが、それは男の思考の外だった]