―薔薇園 夕方―
[迫る夕闇に、ふう、と息を吐いた。
あらかた傷んだ部分を直し、ふくらんだ蕾に人知れず口づけすると、薔薇園を離れ、小屋の裏手にはえる木々のうち一本の根元に座り込んで、空を見上げる。風に揺れるオウシュウトウヒの群れは、まさに「黒い森」と呼ぶにふさわしく。]
…………変、や。
木も草も、なんや静かやな…。
[いつもは雄弁なオークもブナも、可憐に鳴るスズランも、今日は何故か沈黙を守っている、そう、ルートは感じていた。]
そういえば、今日はシェイ坊見てへんなぁ…
[ルートはそう一人ごちて、ローゼンハイムの話>>#1を思い出し、ぶるりと身震い。
気のせいや、そんなんあらへん、と不安を振り払って、小屋に戻ったのだった。**]