― 何時かの教会>>43 ―
[さて。じーさんが預かった修道女とその顛末
その当時の己はというと、
今の今迄無表情だったその小さな娘が
ふんわり柔らかな笑みをじーさんに向けたもんだから
大層めんくらったもんだった
じーさんは、素直そうな子じゃのーと、
何処か微笑ましそうに見ていたけれど
己は。何処か壁を作られたように感じた
寂しいも、何も言わない
肉親と別れたばっかだってのに
恨みの感情すら、其処にはない
唯、親から渡された>>10のであろう
十字架を得た時の弾んだ声から
姿見えなくなるまで見送った彼女の心は家族にあり
この村はきっと仮宿なのだろう、と。漠然と思ったものだった]