― 数年前:ティレル近郊 ―
こら!まて!逃げるな卑怯者!
[ティレルから少し南に下った薄い林の間に、威勢のいい声が響く。
少年から少し踏み出した年頃の、未だ顔立ちに幼さの残る青年が、身の丈より少々短い程度の剣を両手で握って走っている。
追いかけているのは獣じみた耳と鼻づらを持つ薄汚れた小人たち。数匹のコボルトだ。]
おとなしく俺に斬られろ!じゃなきゃ、こっから出ていけ!
[青年が声を張り上げるも、コボルトたちは棍棒を握って鳴き声を上げ、逃げるばかり。
先頭の一匹が小さな洞穴に逃げ込んだのを見て、青年は眉を吊り上げる。]