[北へ向け、軍勢が行く。
その様子>>49を目にして動揺したのは、市井の民ばかりではなかった。
鷹匠の捜索を命じられた者ども、彼らの間にもまた動揺が走る。
無理もない、彼らには何も知らせが来てはいないのだ。すぐに連絡が交わされて、ある者は王宮へと向かった。浮足立った彼らの注意は逸れ、鷹匠を捜索する手は緩んだ。
時は同じく、彼らのうちの一人が王宮に至ると、そこもまた常ならず落ち着かない様子である。門番のうちの一人が口早に語ったところによると、北の国が攻めてきたとか既にゾネス要塞が落とされたとか。
不安げに交わされる話は、このところの不穏な噂話同様に、尾ひれをつけながら広まってゆく。噂は程なく城下にも伝わるか。
若い門番は、不安げに空を見上げた。
騒動以来掲げられているラメールの旗が、常には心強さと誇らしさで胸を一杯にしてくれるはずの旗が、風に揺らぐが何故だかひどく心細く思えた*]