[ 槍を揮った男の目前で、赤い髪が翻る。まるでこちらの動きばかりか、跳躍の幅までも見切ったかのように、絶妙のタイミングで跳び下がった身のこなしに>>52ふ、と、口の端を上げる。 ]
今のを、完璧に避けたのは、二人目だ。
[ 一人目は、勿論カナンだ。
彼以外に、男の初撃の槍先に掠りもしなかった相手は、これまで一人も居なかった。
皆大抵、男の重そうな見た目に騙されて、その槍の速さを見誤るのだ。
しかし、ギデオンが、避けおおせた事を、男は不思議とは思わなかった。
むしろ、それでこそ、と、胸に浮かぶ高揚がある。 ]