雪掻きか…おつかれさま。
そうだな、留守の家が、増えてきたな…。
去年のような、獣の被害が、なければいいが…。
[名を告げれば、僅かな笑みを含むかのように、
穏やかになる声に。仕事の労をねぎらって。
微かに不安気な響きを帯びた呟きが、続く。
山に囲まれた小さな村のこと。獣の被害はよくあることながら、
この数年は少し減っていたらしいとも聞くが。
去年は、獣に襲われた村人や、
獣を退治しようとする流れ弾に当たったような者も出て――…
今年はそんなことにならねばいいが…と、
無意識のように、傷の残る左肩に右手をやって、空を見上げる]