……さて、どうだろうね。
少なくとも私は只の旅人さ。
長く諸国を見て歩けば、それらしいことの一つや二つ、誰にだって口にできるだろう。
[>>49 お尋ねものの鷹匠のことは耳にしていたけれど、今は鷹匠ではない青年にどのような思いがあったのか。白鷹を駆るその姿に、かつて訪れた小国の面影をみつけるくらいには諸国を巡り渡ってきたけれど。それを問いただそうというつもりはなかった。
目の前に居る青年こそが、自分にとっての真実の姿なのだろうから。]
吟遊詩人が聡明かどうか知りたいかい?
それなら、貴殿も吟遊詩人になってみるといい。
[ふっと笑うと、まだまっさらな羊皮紙の束を取り出して、青年の懐に押し付ける。残り数枚手元にあれば足りるだろうし、旅をするなら荷は軽いほうが良い。
栄えていく国も、陰っていく国も、かつて国だった廃墟の街も。詩人にとってはすべてひとしく旅先だ。この暁の国もまた、そんな旅先の一つだった。**]