―少し前:使用人見習い>>2:344―
[まだ足が痛むためテーブルに手をついたまま、クラリッサの話に耳を傾ける。]
そっか。
話すことでもない無いと思ったんだろうな。
[笑顔の奥で、かすかにちらつく。クラリッサの母。少女の折にこの屋敷に奉公に来て本来ならば5年ぐらいの年期を経れば屋敷の使用人を辞めるが。彼女の事情を汲んで雇っていた。
長く務めた彼女が、勘付いたかどうか。領主は知らない。その頃はまだウィルフレッドであったか。
あの少女も母となり、同じような年頃になった娘が屋敷の使用人見習いとして働いているというのは、改めて感慨深い。]
(しっかし。あの子――クラリッサの母親が口を滑らせてないのに、俺が滑らせるとは、やれやれだな。まったく)