[階段の前の扉を閉めれば、部屋に流れ込んでくる冷気は止まった。
振り返れば、部屋にいるのは、男性と自分。
男性は小さなコートを羽織り>>27、其処から覗いた、既に黒くなりつつある沁みが、先程の会話を思い出させる。
───怪我は……してないって言ってた……
───えっと…逃げる…って言ってた……?
エレオノーレに手を引かれ、混乱の中にあったために、男性が何と言っていたのかよく思い出せないが、怪我がないと言っていたような気がして、安心する。
安心したせいか、少し頭が痛い。
その血が一体何なのか、までは到達する前に女の頭は思考することを辞めてしまった。]
…………………。
[男から距離を取り、扉の近くに座り込み、先に聞いた話を思い出す。
───大丈夫、きっとエレちゃんがみんなを助けてくれる………
父さんもメイドさんも昔のお友達も近所のおじいさんも…………母さんも。]