― かつての王宮の中庭で ―
[彼は…いや。彼と一羽は、ウェルシュの言葉を暫くじっと黙って聞いてくれたようだった。言葉途切れるのを待って掛けられる声>>48、それにぴくりと肩が震える。
思いもしなかったその言葉に、ヘーゼルは無言で見開かれた。
ふる。と、首が微かに横に振れる。
分からないというように怯えた表情で首を横に振る。
そう、ウェルシュは今ひどく怯えていた。
何に対してなのか、目前の彼に対してなのか、過去に対してなのか、自らに対してなのかも良く分からない。分からないままに怯えている。
無様だとか、そんなことすら浮かびもしない。冷えたようにも見えるヘルメスブルー、その瞳を見返すヘーゼルは怯えたようにして揺れていた。]