[踊る人々にも、楽器の弾き手にも、顔が無い。影もない。良く良く見ると、舞踏会の壁に張られた鏡にも、誰ひとり映っていない。……アルビンも含めて][その時、すうと冷たい手に引かれた。その方だけには顔があった。……高貴で古くて、そして恐ろしい吸血鬼であることは、教えられなくても分かる。さすがに、無表情は保てなかった。あまりの畏れ多さと、底知れぬ魅惑に指が震える。唇が戦慄く。……しかし、冷たい手はそのアルビンを躊躇なく会場の中央に連れ出した]