―― 追憶 / 雪原の記憶・T ――
[その惑星の記録を辿れば、雪に閉ざされ孤立したシケムの集落を襲った“人狼騒動”と、夥しい数の死者の記録が、紐解かれることだろう。
そのなかに、ふたり。
ガルーと共鳴する別種の寄生体を体内に持ち、人狼を見分ける能力を持った者が、『人狼ではない』と判定した、一人の地球系の通訳の若者と、シケムの若者の記録が見つかるはずだ。
事態を知らせるため、行き交う手段が断たれた雪原を越え、助けを求め、遠く離れた駐屯地を訪れた彼らは。
そのとき、既に“一人”だった。
Simeon Vox
ウォークス、遥か昔の地球に言葉にいわく、『声』――…
その駐屯地を離れた後、その青年は名乗る。
Simeon Walks
――あゆむもの、と。]