[ この館に足を踏み入れる前。
気のせいかと思っていたあの声が、確かに今、頭に響く。
炙った鉄を押し付けられているような痛みが、手の甲の傷口に走る。
あまりの激痛にくぐもった声が歯を立てた唇から零れ、唸る。
確かめるように視線を下に落とせば、何かの模様。
それは、逆十字に蜷を巻く蛇が絡み合うような禍々しい物だった。
唖然としている間に声は告げる。]
「 喜ぶがよい。
おまえが強い感情を向けるその相手が、
おまえの魂を我に捧げると誓ったのだ。 」
[裏切り者を仄めかすような、台詞を。]