その表情も良い。
何処も彼処も綺麗に創られたものだ。
[ネロリの香りが咽ぶ丘で見た穏やかな色よりも、ずっと彼に良く似合う。我が身を退けようとする拒絶は、制止の意味を強くし、彼の下唇を吟味するように食んだ。
音も立てない口付けのお蔭で、シーツの潮騒が反響し。
体温の無かった泥は些かの軟化を見せ、ほのかに熱を持つ。
生命が有す熱量を模したものではなく、情欲が変化した微熱。
漆泥が拘束の為ではなく、肉体を這い摺りだし、触れた場所にねとりとした軌跡を残す。
此れより変容させる無性の身体を検める泥は、ゴポと気泡を立てて微かな刺激を肌に伝播させた。]
もっと私を呼んでみたまえ。
君の媚に情を掛けられるかもしれない。
[男の紡ぐ可能性は全てが偽り。或いは目的を果たす為の手段。
止める未来など露も思考せぬのに、欲望に忠実に甘言を編み。]