人狼物語−薔薇の下国

497 堕天の服従試験


邪眼の怪物 クレメンス


 その表情も良い。
 何処も彼処も綺麗に創られたものだ。

[ネロリの香りが咽ぶ丘で見た穏やかな色よりも、ずっと彼に良く似合う。我が身を退けようとする拒絶は、制止の意味を強くし、彼の下唇を吟味するように食んだ。
 音も立てない口付けのお蔭で、シーツの潮騒が反響し。

 体温の無かった泥は些かの軟化を見せ、ほのかに熱を持つ。
 生命が有す熱量を模したものではなく、情欲が変化した微熱。

 漆泥が拘束の為ではなく、肉体を這い摺りだし、触れた場所にねとりとした軌跡を残す。
 此れより変容させる無性の身体を検める泥は、ゴポと気泡を立てて微かな刺激を肌に伝播させた。]

 もっと私を呼んでみたまえ。
 君の媚に情を掛けられるかもしれない。

[男の紡ぐ可能性は全てが偽り。或いは目的を果たす為の手段。
 止める未来など露も思考せぬのに、欲望に忠実に甘言を編み。]

(53) 2018/03/21(Wed) 02:52:23

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