[その部屋は電灯で明るく、窓はなかった。
ただっ広い部屋の隅に積まれた段ボール箱、それ以外は一階の避難所とあまり変わらない。
数日間は生活が出来そうである。
部屋の奥にはもう一つ扉がある。
女の手は解放され、繋いでいた先の手はその扉へと向かった。
扉が開かれれば、流れてくる冷気。その先にある上り階段。]
エレちゃん、何処へ行くの…?
[上は良く知った避難所だろう、それは容易に想像出来た。
───外へ行こうとしてる……
霊薬店から此処まで、そう長くは掛からなかったけれど、避難所の前から霊薬店まで向かったあの間での天気の悪化を思えば、外の雪は酷いことになっているかもしれない。
階上へ向かおうとする友人を追おうとして、制される。]
『此処に、居て。』
[階段上から流れてくる冷たい空気と友人の言葉に足は止まる。
そのまま友人の背中を見送った。]