[南島の山岳地帯。
そこは、古き在り方を守り続ける『まつろわぬ民』の住まう地のひとつ。
千年の昔、異邦人と交わる事を拒んだ彼らはこの地に移り住み、峻嶮なるその地勢そのものを壁として他との交流を断ち続けてきた。
そんな在り方に変化が訪れたのは、ここ数年の事。
古き在り方を学ぼうと訪れるもの、山岳が齎す利益を求めるもの──そんな来訪者たちとの接触。
小さな波はそれでも、長く続けられてきた営みを揺るがすほどではなかったものの。
『外』に惹かれて飛び出した一族の長の長子が、里帰り時に見つけた『それ』は、閉ざされていた山岳の民の在り方に一石を投じる切欠と十分成り得ていた]