[……なんて、絶対に言える訳がなかった。
高熱でもあるのかと強制的に旅行を中断されては堪らない。
修学旅行を楽しみにし過ぎて一ヶ月前から服やキャリーケースやらの準備をしたり、昨夜なんかは眠れなくて羊を数えたりしたものだ。
だが、そんなことを口にしたら盛大に笑われるに決まっている。]
ま、お前よりも身長高いからな。
その分足も長いし、足癖悪いのも仕方ないだろ。
[窓の外に視線を固定し、嫌味ったらしい皮肉>>22に噛み付こうとする衝動を咄嗟に飲み込んだ。その代わりに憎まれ口を叩く。
身長差はたかだか1cm。誤差でしかないが、それでも高いということは肉体的に優れていると数値が示してくれる。
優越感に浸り、鼻で笑っていると窓の外が木々で覆われ、鏡状となり車内の光景が反射する。
不明瞭ながらも大河がこちらを見て、更に微笑んで見える表情に息を飲んだ。目の錯覚だろう、と十数秒目を伏せる。]