[廃墟と化した市街地痕。周囲に警戒をしつつ、できるだけ建物の陰に隠れて進む。懐かしい光景を、脳が勝手に再生してゆく。そこの角を曲がって、花売りのワゴンの隣を入ると、小さな家があったはずだ。――……かつて、ここで。穏やかに暮らしていた時があった。空と海だけが、あのころと変わらない]