きみと出会う前の、
もっと幼い頃の話だよ。
きみは南方で起きた紛争を知っているよね?
ラメールで起きた被害も記憶に新しいと思う。
…ボクはね、
所謂戦災孤児で、親が居ない。
というのはきみも知っているかもしれないけれど
ボクの生まれ故郷はラメールじゃないんだ。
今はもう南の強国に吸収されて
地図には名前のない国が故郷なんだよ。
ボクの故郷はね、
今まさにきみが危惧しているこの国のように
ラメールと別の隣国との戦場になって滅びた。
だからもう、あんなことは二度と、
二度と繰り返させたくないんだ。
平穏に生きて来た人間が、
いきなり人としての尊厳を奪われる
あるいは命すら奪われる。
大切な人を裏切るより、裏切られるより
何より恐ろしいのは人としての死だ。そう、思ってる。