― 王の間に響き渡る哄笑 ―
[哄笑を上げさも愉快、と言わんげに笑っていても、心の淀みは決して晴れる事は無い。
寧ろ嗤えば嗤うだけ、黒い何かががんじがらめに絡み付いて締め付けてくる。
呆然としてる弟を見遣る翠は一体何を伝えたかったか>>28>>29。
弟が顔面蒼白になっている大将に指示を下し、軍を出兵させているが、王都から馬でも一日掛かるゾネス要塞まで到着するまで持ち堪えられるとは思えない。
仮に持ち堪えたとしても、男が入れない女の砦に如何にして入り彼女らを守る、というのか。
此方はくつくつと嗤いに堪え、悪意を込められた翠を弟に向けた。
止めろ、と悲痛な叫びを上げる弟>>32]
――――もう、止められん!
[戦いの火蓋は切って落とされた。もうこうなってしまえば後戻りは出来ない。
また、心の中で蠢く憎悪もまた、止める事は出来ない。]