― 回想/古き旅路にて>>0:78 ―
[それは男が騎士の家を継ぐよりも前、クレメンス・マドゥーラの元で教えを請い、ナネッテ・マドゥーラに容赦なくどやされ、エリオット・マドゥーラらと競うあうようにして商売の腕を磨いていた頃の話。
思い返しても迂闊だったとは思う。
田舎道とはいえ街に程近い道、ならば問題なかろうという、それは油断だったし自ら剣を取れる自負もあった。
それでも荷を積んだ馬を引き、商財を持ち歩くなら備えは怠るべきではなかったのだ。決して。
彼と出会ったのは、そんな、思い返しても頭を抱えたくなる大失敗の折であった。]
あっちゃ〜…。
ううん…、これは流石に。参ったなあ。
[うーん困った、と。
本気で困っているのだが、どこか余裕と愛嬌があるかに見えるのは男の長所であり短所でもある。顔の造りがこうなのだから仕方がない、とは野盗相手に言って仕方がないか。]