―――…かねてより打診を受けていた通り、
ヴィダンの民の取り纏め、僕が引き受ける。
若輩ゆえ足らぬところは多いけども、
我らの悲願、成就させるためにも微力を尽くすつもりだ。
[ディーンを中心として独立の気運が上昇すれば、マーチェス平原に根を張る遊牧民――ヴィダンの民としての決断も迫られる。
参陣にあたり水面下での調整が様々に進められて来たが、
まず、ヴィダンの民の中で指令系統が散らからぬよう、ディーンの命を速やかに伝達する役目として、彼と近しいエドルファスにお鉢が回ってきたというわけである。
大役に躊躇がなかったわけではない。
だが、帰還の途で、平原の大風に飲み込まれた瞬間。
恐れを知らずごうごうと鳴る風の声、背の高い草木の葉擦れの音、
それらに身を浸した刹那――心は決まった。]