―キュベルドンの森にて―
[燦々と輝く太陽、その恵みを受けようと木々は今日も貪欲に枝葉を伸ばす。
木々の合間を縫うように小川が流れ、キュベルドンの森を潤す。
そこに、橋が架かっている。
大して大きくも無い、けれどもその橋を渡らなければ先へ進めないという場所に、クマは立ちはだかっていた。]
おうおう、坊主の割には結構良い身なりしてンじゃねぇか。
[クマは、がはは、と下品な嗤いを浮かべた。
今日は良い日だ、鴨が葱を背負ってきた。
そんな風に、クマは思った。
クマは、山賊だった。
2メートルもある巨躯に物を言わせて、人々から金品を巻き上げていた。
気の弱い人なら、その風体を見ただけで身を竦めた。
気の強い人でも、喧嘩で勝てる者は居なかった。
クマは、その森の王者だった。
大振りの斧を見せつけるように何度も素振りをしながら、ゆっくりとクマは少年に近付いていった。]