[正直な所。
記憶を取り戻すことに関しては、消極的な部分が大きかった。
いくつか方法を試したけれど結局上手くいかなかった事、養父から告げられた事実から理解できたもの――思い出したところで、帰る場所はない、という現実から、目を逸らしたい思いの方が強かったから。
けれど]
(……あんな事まで、言われちまったら、なぁ)
[背の傷痕を見ながら言われた言葉。>>3:_12
当たり前と言えば当たり前だけれど、生きていた事を喜ばれたのは、目覚めてから初めての事で。
そう、言ってくれた彼女の事を思い出せないままなのは、苦しくて。
思い出せない事が翳りの原因となっているのも、同じくらい苦しくて。
それが、何に基づく苦しさなのか、自分なりに見極めたい、と。
そんな思いが踏み切らせた部分もあった――というのは、長くなるので割愛したのだが]