― ある暖かい春の日 ―
[冬の寒さが消え失せ、ラメールにも暖かい春が訪れていた。
中庭で親子三人で日向ぼっこしていれば、何時の間にか母と弟は夢の中を揺蕩う>>45。
吟遊詩人が静かな歌を捧げようかと問い掛けど、首を横に振り子供なりの丁重な断りの態を見せる。]
おかあさんもウェルシュもねちゃったから。
[かくゆう自分も眠くなりしぱしぱと瞬きをし眠気に耐えていた。
此方側を気遣い静かに立ち去っていく吟遊詩人に軽く手を振り彼女を見送る。
眠気に耐えようと小さな手で何度も瞼を擦るなど抗っていたのだが。
こんなにも穏やかで暖かい春の空気は、より眠気を煽らせて。
こくりこくり、と首を揺らしていたら、次第に母の腕に凭れ掛かって安らかな吐息を上げていた。
ほんの少しでもいい、母の温もりを感じながら、今は夢の世界へに身を委ねる*]