[すっかり綺麗になった帽子を被りなおして背を向ける大切な兄を、少女は見えなくなるまで見送った。
見えなくなってから、すう、と息を吸い込んで目を閉じれば。
確かに遠ざかる彼の気配を確りと感じ取ることができた。]
……は、ぁ。
[気が抜けたからか唐突に襲い来る疲れに、少女は耐え切れずに壁に寄り掛かる。体の疲れは然程でもないが、思った以上に精神が疲弊しているらしい。
重くなる瞼を必死に持ち上げて、少女は呟いた]
すこしだけ。
すこしだけ、仮眠を取りましょう。
[そうして少女は頼りなげな足取りで歩み、客室らしき空き部屋へと入る。綺麗にメイキングされたふかふかのベッドを見ればもう我慢の限界で。
少女はベッドの上にどうと倒れこみ、丸まって寝息を立て始めた*]