[だんだんと距離が縮まる整った顔立ちを、ただ眺めていた。
剣を振るい、…に触れる手は夢物語の王子のようだなどと。
肩口の傷が熱を孕む。
唇が触れているのだと分かった。
次いで口をついた「さよなら」とあう言葉に]
…なんで、そんな事言うの。
[ なのに、なんでそんなことするの。
滑らせた手は相手の両手に触れることが叶うだろうか。
悲痛とも無表情ともつかない顔で、抱き締めることなく血の通った手のひらを探した。
汚い血がリヒャルトを汚す。]
リヒャルトが望んだ形でしょ。私に使い魔であれ、魔物であれと願ったのはあなただよ。
[抱き締められないまま、血濡れの手は相手の傷口に触れたいと動いた。]