― 昨夜回想・宿屋 ―
[去る直前、オットーに背中を向けたまま、肩越しに右手を振ってオットーの返事をする。]
ああ、悪い悪い。
悪い狼とか、自分は美味しくないとか。
そっちの意味が分かってないお子様に言うのは、まだ早かったかな?
[冗談だと分かった上で辛辣に返す。少なくとも、オットーにはその手の経験がないだろうと思っての指摘だった。我ながら性質が悪い。
断っておくが、決して図星を刺されたことの報復ではない。あのときは嬉々と指摘するオットーに無言を貫いた。言い返すなら、あの時点でしている。窓ガラスに触っていたと告げるオットーに、”お前の指はパンを作る指だから、大事にしろよ。”と心配はしたけれども。]