[崖崩れが起きたその日に見つかったという元鉱山夫の遺体は、痛々しいのと同時に不可解な点がいくつかあった。
まず件の事故に巻き込まれたわけではなさそうだ、というのは一目で分かる。
いくつか刻まれた傷のうち、目立つのは鋭い爪傷と、無理矢理喰いちぎられたかのような欠損部位があったこと。
これらの傷を人為的に付けるのは難しい。
かといって森の獣の仕業、と決めつけるにもどこか違和感がある。そもそも彼らが人里近くまで来ることなど滅多にないのだ。
では、仮に『人狼』が村の中に存在していて、今回の事件を引き起こしたのだとしたら?]