― 早朝、礼拝堂にて ―
[まだ仄暗い礼拝堂で、…は祭壇に祀られた聖櫃の横の聖体灯にマッチで火を灯すと、祭壇上の祭具や聖書の位置に変わりがないことを確認する。そして信徒席に降りて教会正面の大きな扉の閂を外し、外に向けて押し開けた。そして祭壇を振り返り、十字を切る。]
我らが父なる神よ、今日もその御加護を。
[そのとき、遠くからパタパタと走る足音が聞こえ、…は振り返ってその方向を見た。色とりどりの*撫子*を抱えた女性が、此方に向かって走ってくるのに気づく。]
あれはユーリエさん、いつも有り難いことです。私のような凡庸なつまらぬ司祭一人のこの教会に、彩りを運んできてくれる…。
[…は先の祈りに、心の中でそっと(彼女が転ばないように)と付け加えた。]