[そんな説明の中、ヴィクトリアの脳裏にはその時のことが流れるように思い浮かぶ。
家を出る切欠になったのは、12歳の時に聞いた姉の言葉。
その時姉は14歳で、親に婚約者を決められた直後だった。
「…貴女達だけでも、自由に生きて」
姉は優しく穏やかな人で、責任感も強い人だった。
自分が家に縛られることは長女である故に仕方の無いこと。
けれど、妹達だけは、と。
そんな切なる想いがその言葉を紡がせた。
ヴィクトリアがその言葉を聞いて、自分も姉のように親に縛られる可能性を見出したのは無理からぬこと。
元来縛られるを良しとしない性格だったため、姉の一言はこの先の人生を大きく変えるのに十分なものとなった。
当時6歳だった妹は意図を全く理解出来なかったらしく、ヴィクトリアのことを家を捨てたと思い嫌悪を隠さない。
そのことが少し悲しくもあったが、後悔はしていなかった]