[ヤコブの心の中にフローラという女性がいることは知っていた。同居を始めて日が浅い頃。眠る彼が苦しげにその名を呼ぶのを聞いてしまったからだ。人狼禍の最中、彼が頑なに他人を信じようとしなかったのは、きっと、彼女に関わる何事かがあったからだろう] ヤコブさんも、わたしと同じなのかな。 きっと、忘れたくても忘れられない、悲しいこと、 ……あるんだよね。