[このとき魔王が鉄底族に手を出さなかったのは、魔王にとってもこの岩妖精たちが少しばかり扱いに注意を要するものであったからに過ぎない。
魔の間で生きるため魔の倫理に染まったとはいえ、姿形が変わるほどには歪んでいない。
鉄底族のドワーフは狼牙族に輪をかけて頑迷で誇り高く、族長たる偉大なる鷲髭のゴルバは一族に向けられた侮辱を決して許さず、氏族の結束も固い。
今は自分たちの王国を得るという一族の悲願達成のために魔王に従っているが、魔王と言えど彼らを恣に扱うには氏族すべてを殺しつくすしかない。
その気になればこともなく彼らを滅ぼすだろうが、今のところは必要もなかった。]