― 宿のレストラン ―
[葡萄酒とそれに合わせた食事が提供されるとあって、浮かれざわめいていた宿が、>>37医師の登場に水を打ったように静まり返る。ひと呼吸おいて、各々が不安げに話し始めた。家族に知らせるため、走り出ていったものもいる。先ほどまでの和やかな空気はもうなかった。]
ジークセンセー、それは本当なのか?エーヴァルトがいないだって?
職務に忠実なアイツが一晩屋敷を開けるなんて…。
もしかしたら、どこかで足を滑らせて、動けなくなっているのかも。
この辺りの地理ならよく知ってる。オレは森に入ってエーヴァルトを探してみよう。
誰か、一緒に手分けして探してくれないか?
[…が声をはりあげると、村の男たちの何人かが賛同し後に続いた。]
やぁ、お姉さんたち、心配することはない。綺麗な顔が台無しだ。ほら、笑って。アイツは強い。きっと無事に帰ってくるさ。
さぁ、今はパーティの準備を。オレのためにいい席をあけておいてくれよ。
[…は宿を出る前に女性達を安心させようといつもの調子で軽口を叩き、ウィンクしたが、声に不安が滲むのは隠しきれなかった。]
[村中に今夜の催しについて知らせる仕事はカレルに任せて、日が暮れるまでディークと探索隊は森でエーヴァルトを探すことにした。]