──── 自室 ────
………広い。
[ そして綺麗だ。
今開けたばかりの扉をそっと閉じ、通路に立ち尽くす。
何だこれは。新手の拷問か。
なるほど。あいつらは私に贅沢とらやを覚えさせ
それを奪うことで楽しもうとしているのだな?
本当に悪趣味な連中だ。
つまりここに、私の───はいない…?
仕方ない。落ち着く場所を探しに行こう。
その場に座りこんで先程もらった用紙を記入する。
記入する、というより写すといった方が正しいか。
真新しい、黒い肩掛けカバンから
くしゃくしゃの紙を取り出し、そこに書いてある文字を
一つ一つ写していく。
慣れない手つきでゆっくりと。
もしこの様を見ているものがいたなら
大人びた女が難しい顔して、
しかも地べたで文字を書いているという
何とも奇妙な光景だっただろう。
その後はようやく書き終えた用紙を手に
アテもなくメインサロンへ向かおうと。** ]