― 始まりの刻:古戦場跡 ―
[魔王が封印されし洞窟から、徒歩で南へ二日程度。
かつて英雄戦争にて、優勢から次第に劣勢となっていった魔軍が、最後の大きな抵抗を見せた場所。
既に戦の爪痕はほぼ掻き消えてはいるものの………「彼」は死したそこで、今もなお刻を待っていた。]
…………!!
[魔物の首魁を宿し、最後まで魔軍のために抵抗した、現世の魔王となるべく者の封印が解けたという衝撃。
他ならぬ彼だからこそ、いち早くそれ>>35を察知することが出来た。
――我らが主のご帰還だ。
生前に研究していた死者蘇生の魔術は結局完成することはなかったが、しかしそれは未完成なりに力を宿していた。
その場に残る恩義と忠義、そして人間に対する敵意が、己が最期に掛けた魔術の力を借りて一つの形を作る。
薄いもやであったものは段々と濃くなり、形は徐々に輪郭を帯びる。数分後、それは生前の彼の姿を成した。
魔王の復活に舞い上がる砂埃と震える空気、不吉に響く風鳴り。それらは、魔王だけでなく、その忠臣である彼の帰還を畏れているようでもあった。]