[ 命を賭けた鬼ごっこが始まった。 泥を蹴立てて、何度も転びながら少年テオドールは走った。 あちこち向きを変えて降りしきる雨の中、すぐに方向感覚は失われた。 魔境の中、 成人も迎えて居ない少年ひとりでは、ただ生きて行くことすら困難だった。 昏い森の中に引きずり込まれそうになったこともあれば、 冷たい南海の波間から、白い手に招かれた事もあった。 雨水を飲み、得体のしれない果実を齧った。 1日か、3日か、一週間か……時間の感覚すら分からなくなった。 ]**