[ カスパルは、胸元に残る傷に巻かれた包帯に手を当てた]
ベルガマスコの最後の悪あがきで、この傷を受けた時、私は死をも覚悟した。
けれど、恐ろしいとも無念とも思わなかった。一つには、クレステッド......エンバー殿が必ず邪術師にトドメを刺してくれると信じていたせいでもある......そして、もう一つは、お前がいてくれるという事だった。
私が倒れても、お前なら残された騎士隊を見捨てはせずに、まとめてくれると信じていた。
[ それはやはり、我侭で勝手な願望だったかもしれない。しかし外れては居ない筈だと、見つめる瞳は絶対の自信を奥に沈める ]
そう思える相手はお前だけだ。
それが、あの瞬間に...死を意識した、その時に、判ってしまった。
だから、私は、私の命にかけて、この願いを口にしている。
私の我侭であることは承知の上で。
イェン......もう一度、私と共に、同じ道を歩いてくれ。
そして、お前が戦うべき時には、私にも、その背を護らせて欲しい。
[ それが例えば、物理的な敵との戦いではなかったとしても、と、その言葉は告げていた* ]